2014/05/26

KeynoteでPDFファイルを開く

PDFファイルをKeynoteのプレゼンテーションで使う時、どうしていますか?

PDF to Keynote

これを使うとPDFをKeynoteファイルに変換することができます。またレイアウトのずれが激しいWindowsのPowerPointファイルを一旦PDFとして保存し、その後PDF to Keynoteを使ってファイルを開くと割と良さそうです。

2014/05/23

片側の間欠的な頭痛、血圧の上昇と持続性の耳鳴を訴える高齢女性

不眠、消化器癌術後、水腎症のためWJカテーテルを留置された当院通院中の70歳代の女性。

突然の動悸発作のため当院救急外来を受診し、発作性心房細動を指摘されたため循環器科受診となった。発作の頻度は低く、しばらく経過観察となった。

循環器科を受診した約1ヶ月後の朝方に、突然、動悸、耳鳴りと片側の後頸部〜側頭部の痛みを自覚し外来を受診。すぐに動悸は改善したが、頭痛と耳鳴が持続したため耳鼻科を受診したが、特に異常なしとの返事であった。その後数時間の安静で耳鳴は改善した。再度病歴を聴取すると、以前から頭痛を自覚することがあったとの事であり、一次性頭痛と診断しNSAIDの投与を行った。

しかし、その後も拍動性頭痛と耳鳴を自覚、特に血圧の上昇時に悪化し、度々救急外来を受診するようになった。救急で行った頭部CTでは器質的異常はなく、血圧が低下すると症状が改善するため経過観察となった。循環器受診2ヶ月後には、頭痛、耳鳴、片側の眼痛を自覚したため眼科で精査を受けたが緑内障は否定的であった。受診頻度が多く原因検索目的に入院となった。

<身体所見>
血圧120/70mmHg,脈拍70bpm整
顔面浮腫なし、甲状腺腫なし
胸部、腹部には診察上問題なし
下肢に浮腫なし

<検査所見>
RBC 380 Hb 9.5 Ht 29 MCV 77 Plt 34.8 BNP 189.5 
甲状腺ホルモン:正常、カテコールアミン、PRA、Ald正常

<鑑別診断>
二次性頭痛の鑑別のためMRI検査を行った


この疾患は何でしょう
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<診断>
硬膜動静脈瘻

頭部MRIで上記と診断した。頭部を再度診察すると側頭部に収縮期雑音を認めた。経過から血圧が上昇しシャント血流が増えると耳鳴が悪化するという病態を疑った。

この症例の反省点は,①耳鳴をキーワードに鑑別診断を行わなかった、②頭部CTで異常がなく、二次性頭痛の鑑別が不十分であった、③頭部の診察が不十分で、他覚的耳鳴の診断ができていなかったという点です。

<ポイント>
  1. 耳鳴は年齢とともに増加し、40歳代、50歳代で20%以上の患者が訴える。
  2. 発生源により末梢性・中枢性、症状により自覚的・他覚的に分類される
  3. 心血管障害・神経系障害・薬剤性などの関連症状の事があるため病歴が大切
  4. 随伴症状に注意(難聴、めまい、耳痛、頭痛など)
  5. 中枢性耳鳴を疑ったら頭部CTだけでなく、MRI検査も行う
  6. 後天的疾患であるが成因は不明、中年女性に多い
  7. 本邦における硬膜動静脈瘻の発生頻度は0.29人/10万人/年で、海綿静脈洞部病変の占める割合が46%と多い

2014/05/21

上肢の浮腫と全身倦怠感を訴える高齢女性

高血圧症、糖尿病、不眠などの診断で近医通院中の80歳代の女性

当院受診の2ヶ月前より右手背の浮腫、1ヶ月前より全身倦怠感を自覚。浮腫の悪化があり、近医を受診しセフカペンの内服を処方された。その約2週間後に両肘〜前腕部の対称性の腫脹と熱感、脱力、皮疹、顔面浮腫を自覚するようになった。さらに軽度の労作時の呼吸困難のため近医を再度受診し,心不全の疑いで循環器科に紹介。

<家族歴>姉が関節リウマチ

<身体所見>
血圧,脈拍に問題なし、体温37.3度
顔面浮腫なし、甲状腺腫なし
胸部、腹部には診察上問題なし、皮疹あり
下肢に浮腫なし、両肘〜前腕部の対称性の浮腫と熱感あり、

<検査所見>
WBC正常、CRP陰性、PCT陰性、ESR25mm/h
抗核抗体陰性、RFは18と軽度上昇、AST 80、ALT 50、LDH 300、ALP 750、CPK 600
甲状腺機能:正常

<心エコー>正常、<胸部レントゲン>軽度の心拡大

<鑑別診断>
感染性疾患、薬剤性、自己免疫疾患などを鑑別疾患に考えていた。CPKが軽度上昇しているのは?だが、高齢発症,自己抗体が陰性、急性発症の左右対称性の浮腫があることから、RS3PE症候群を疑った。数回の経過観察後、経口ステロイドの投与を開始した。その後,浮腫は徐々に改善したものの、胸部、顔面の掻痒感、全身倦怠感(脱力感)のため動けなくなったため、初診から約1ヶ月後、精査目的に入院となった。

(顕性化してきた皮疹、今回の症例のものではありません)


この疾患は何でしょう
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<診断>
皮膚筋炎

担当の研修医が皮疹を見るなり”皮膚筋炎”なのではという意見で、皮膚科をコンサルトしたところ頸部は皮膚筋炎に特徴的なVネックサインということが判明しました。神経内科で近位筋の筋力低下、針筋電図でも筋原性変化、MRIで筋肉の炎症性変化を認め、CPKの上昇と合わせて皮膚筋炎と確定診断しました。初めに膠原病専門医が皮疹と血液検査データをみていたら、もっと早い段階で診断できた可能性があります。今回は優秀な研修医に助けられました。

まだ診断がついていない時点で、放射線科の先生が胸部CTで通常とやや違う間質性肺炎を認めるとコメントされていました。さすができる放射線科医は違う!

この症例の反省点は,①高齢で抗核抗体が陰性であり、RS3PE症候群以外の膠原病はないだろという考え,②CPKの軽度の上昇や皮疹というキーワードが抜けていた、③皮膚筋炎の皮疹を診たことがなかった、④急速に進行するという事を知らなかった、という所です。以下に大事な疫学を記載します。

<疫学>
  1. 日本の年間発病率は5~10人/100万人、有病率は2~5人/10万人程度で、成人では1:2の割合で女性に多い。あらゆる年齢層に発症するが、小児期(5~14歳)と成人期(35~64歳)にピークを持つ2峰性分布を示す。
  2. 多発性筋炎の進行速度は患者によって非常に不均一で、年余にわたって診断されずに生活される症例、週単位で体重減少(筋量低下)、歩行不能、嚥下障害(誤嚥・窒息の危険)、換気障害に至る例もある。しかし、基本的に急性発症はしない。
  3. 間質性肺炎が30~60%に出現する。
  4. 特徴的な皮膚所見(へリオトロープ疹、ゴットロン徴候、V字ネック型紅斑、項部から両肩に広がる紅斑など)

2014/05/20

ティアニー先生の診断入門

ティアニー先生の診断入門

総合診療について興味を持つきっかけになった本です(初版本の方ですが)。

指導的な立場になった時、自分は鑑別診断を考える方法について体系的に勉強したことがない事に気付きました。これでは、外来や当直で指導することがままならない、また自分もこのままではいけないという気持ちになった時に購入しました。

大リーガー医としてとても高名なティアニー先生が、患者の問題点を全て挙げ、11のカテゴリーから鑑別診断を考えていくというプロセスが非常に分かり易く記載されています。実際に自分で診断していくようなストーリーになっていて、読み物として非常に面白いです。

初期研修医にこの本を紹介したところ、内容が難しかったという意見があったので、ある程度の臨床経験がないと面白いと感じないのかもしれません。そういった研修医には検査や身体所見の意味を調べながら読み込んでいくと良いとアドバイスしてみました。

内科医としての醍醐味は色々ですが、診断のプロセスはその1つであるように思います。まるで自分が名探偵にでもなったような気持ちになり、問題が解決したときのすっきりと晴れやかな気持ちは何とも言えません。そのワクワクを共感できる1冊だと思います。薄くて安い本なので、全ての内科医にお勧めします。