2014/05/23

片側の間欠的な頭痛、血圧の上昇と持続性の耳鳴を訴える高齢女性

不眠、消化器癌術後、水腎症のためWJカテーテルを留置された当院通院中の70歳代の女性。

突然の動悸発作のため当院救急外来を受診し、発作性心房細動を指摘されたため循環器科受診となった。発作の頻度は低く、しばらく経過観察となった。

循環器科を受診した約1ヶ月後の朝方に、突然、動悸、耳鳴りと片側の後頸部〜側頭部の痛みを自覚し外来を受診。すぐに動悸は改善したが、頭痛と耳鳴が持続したため耳鼻科を受診したが、特に異常なしとの返事であった。その後数時間の安静で耳鳴は改善した。再度病歴を聴取すると、以前から頭痛を自覚することがあったとの事であり、一次性頭痛と診断しNSAIDの投与を行った。

しかし、その後も拍動性頭痛と耳鳴を自覚、特に血圧の上昇時に悪化し、度々救急外来を受診するようになった。救急で行った頭部CTでは器質的異常はなく、血圧が低下すると症状が改善するため経過観察となった。循環器受診2ヶ月後には、頭痛、耳鳴、片側の眼痛を自覚したため眼科で精査を受けたが緑内障は否定的であった。受診頻度が多く原因検索目的に入院となった。

<身体所見>
血圧120/70mmHg,脈拍70bpm整
顔面浮腫なし、甲状腺腫なし
胸部、腹部には診察上問題なし
下肢に浮腫なし

<検査所見>
RBC 380 Hb 9.5 Ht 29 MCV 77 Plt 34.8 BNP 189.5 
甲状腺ホルモン:正常、カテコールアミン、PRA、Ald正常

<鑑別診断>
二次性頭痛の鑑別のためMRI検査を行った


この疾患は何でしょう
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<診断>
硬膜動静脈瘻

頭部MRIで上記と診断した。頭部を再度診察すると側頭部に収縮期雑音を認めた。経過から血圧が上昇しシャント血流が増えると耳鳴が悪化するという病態を疑った。

この症例の反省点は,①耳鳴をキーワードに鑑別診断を行わなかった、②頭部CTで異常がなく、二次性頭痛の鑑別が不十分であった、③頭部の診察が不十分で、他覚的耳鳴の診断ができていなかったという点です。

<ポイント>
  1. 耳鳴は年齢とともに増加し、40歳代、50歳代で20%以上の患者が訴える。
  2. 発生源により末梢性・中枢性、症状により自覚的・他覚的に分類される
  3. 心血管障害・神経系障害・薬剤性などの関連症状の事があるため病歴が大切
  4. 随伴症状に注意(難聴、めまい、耳痛、頭痛など)
  5. 中枢性耳鳴を疑ったら頭部CTだけでなく、MRI検査も行う
  6. 後天的疾患であるが成因は不明、中年女性に多い
  7. 本邦における硬膜動静脈瘻の発生頻度は0.29人/10万人/年で、海綿静脈洞部病変の占める割合が46%と多い

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