2014/06/20

口腔アレルギー症候群(Oral allergy syndrome:OAS)

口腔アレルギー症候群
昨日の勉強会で初めて知った疾患です

(概念)

口腔粘膜に限局するアレルギー症状のことで、口唇、舌、口蓋、咽頭の急激な瘙痒、刺痛感、血管性浮腫、場合によっては耳の瘙痒感や咽喉圧迫感などを生じ、通常これらの症状は次第に治まってく症候群。

(病態)

症状を誘発しやすいフルーツには、リンゴ・キウイ・モモ・メロン・サクランボ・マンゴー・グレープフルーツなどがあります。野菜では、セロリ、ニンジン、トマト、ジャガイモ、ナッツ類では、アーモンド、ピーナッツ、クルミ、ココナッツ、ヘーゼルナッツなどが同様の症状を引き起こしやすいとされています。天然ゴムに含まれるラテックスも同様のアレルゲンとしての共通性があります。 食物と交差反応を起こす花粉抗原の代表としてシラカバ花粉の主要抗原であるBet v1やBet v2(プロフィリン)が知られています。Bet v1はPR protein(pathogenesis-related protein:感染特異的タンパク質)の一つ(PR‐10)に属し、植物がストレスに曝されると植物内に増加します。また多くの植物がこのタンパク質を有することも報告されており、交差反応性はこのグループ内での高いアミノ酸配列類似性によると考えられています。また、これらアレルゲンのIgEエピトープは加熱処理や酵素処理などによって容易に喪失してしまうことから立体構造に依存していると考えられています。ただし例外として、Bet v1グループに属すセロリ Api g1は加熱処理後でもアレルゲン性を有することが知られています。また最近Bet v1グループに属する一部のアレルゲン(Api g1や大豆 Gly m44))でPFSであるにもかかわらず、OASだけではなく全身症状を高率に伴うことが報告されており注目されています。

(治療)

食物を摂食した直後から始まる口腔内に限局したアレルギー症状の病歴と該当食品に対するIgEの証明によってなされます。該当食品が果物・野菜によるPFSの場合は、これに加えて花粉症の病歴があるか花粉に対する特異的IgEが陽性である(花粉に感作されていても花粉症を発症していないケースもあるため)ことです。該当する食物に対するIgEの測定は、市販の検査では抗原性が失活していることがあり、プリックテストのほうが有用であるとされています。

(診断)

対象食品の除去が基本ですが、加熱処理により経口摂取が可能になります。

2014/06/18

右室梗塞

(疫学)
急性下壁梗塞に合併する頻度は30〜40%

(病態)
急激な右室収縮不全により、右室拍出量が低下、代償的に静脈還流が増加し、右室拡張末期圧の上昇と右室拡大を来す。心膜が右室の拡張を制限するため、右室流入障害を来たし、さらに右室拍出量が低下する。Swan-Ganzカテーテルでは、①dip and plateau、②心拍出量の低下と右房圧の上昇(10mmHg以上)かつPCWPより高くなる。

(治療)
血圧を90mmHg以上、PCWPを15〜18mmHg、右房圧を15mmHgが目標。
 1 大量輸液(100〜200cc/h)
 2 1L以上の輸液後、病態の改善が無ければ,Swan-Ganzカテーテルを挿入
 3 左心不全を合併していれば,強心薬+IABPを考慮
 4  心室ペーシングは無効(心房心室の同期ペーシングは有効)。

2014/06/17

鯖で蕁麻疹

青魚などを食べた後に蕁麻疹が出た患者さんを時々診察する機会がありますが、もともと鯖にアレルギーがない方であれば、ヒスタミン食中毒(scombroid poisoning)を考えます。

Scombroidはサバ科のことで、サバ、マグロ、カツオ、サンマなどのことを言いますが、Scombroid以外の魚(イワシ、マイワシ、シイラ(mahimahi)、カタクチイワシ、ニシン、カジキ、オオキスズキ、シャケ、ハマチ)や鶏肉、ハム、チェダーチーズ、ドライミルクでもヒスタミン中毒は起こりうる(Step Beyond Resident 3、林寛之著、P.165、羊土社)」そうです。


食中毒を引き起こすと考えられる食品中のヒスタミン濃度は次のように推定されています。
  1. 5mg/100g以下:安全域である。
  2. 5~10 mg/100g;感受性が高いグループでは食中毒を起こす可能性がある。
  3. 10~100 mg/100g:食中毒を起こす可能性があり、軽度~中程度の症状を呈す。
  4. 100 mg/100g以上:食中毒を起こす可能性が高く、重篤な症状を呈する。
家族で同じ魚を食べても、魚肉に含まれるヒスタミンの量に違いがあり、症状がでる人と出ない人がいるのはこのためですね。

食品衛生の窓東京顕微鏡院にも詳しい解説がありますので、ご参照ください。

2014/06/16

アナフィラキシーのときのアドレナリンの筋注・皮下注、グルカゴンの使い方

アドレナリンの最高血中濃度までの到達時間は以下のとおり
 筋注 :8±2分
 皮下注:34±14分

アナフィラキシーの死亡例の多くは30分〜1時間以内に死亡していると報告されており、筋注でないとダメなのは頷ける。

β遮断薬を内服していたり、アドレナリンが効きにくい場合はグルカゴン1〜2mgを投与しても良い。

2014/06/06

上腕の腫脹と発赤、全身倦怠感を訴える60歳代の男性

高血圧症、脂質異常症の診断で近医通院中の60歳代の男性
受診前日から突然右腕の腫脹を自覚し徐々に増悪した。発熱、全身倦怠感もあるため内科を受診した。

<アレルギー歴>なし
<内服薬>降圧薬(Ca拮抗薬)、スタチンなど

<身体所見>
血圧80/50mmHg(普段は130mmHg程度),脈拍100bpm、体温37.5度、呼吸数は25回
右手背から上腕にかけて、発赤、高度の腫脹があり、自発痛が強い

<検査所見>

WBC 6000、CRP 22、Plts 25万、凝固異常なし、PCT>10、
BUN 40、Cr 3、AST 20、ALT 20、CPK 150、T-Bil 2.5
(1年前の血液検査ではは肝・腎機能異常なし)

<問題点>

1 皮膚の発疹
2 血圧低下(ショック状態)
3 炎症反応の上昇
4 腎機能障害
5 総ビリルビンの上昇

この疾患は何でしょう
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<診断>

劇症型溶血性レンサ球菌感染症による壊死性筋膜炎と毒素性ショック症候群

急速進行性であり早急に外科コンサルト!(時間の遅れは致命的)

<臨床像>

壊死性筋膜炎の三徴は、①局所の変化に対して痛みが異常に強い、②進行が早い、③皮膚が非常に湿潤している、だそうです。本例も急速(24時間以内)に症状が進行していることから、壊死性筋膜炎と診断しました。早期に壊死性筋膜炎と単純な蜂巣炎を臨床的に区別することは難しく、この疾患を疑えば、すぐに外科をコンサルトして、病変部分の切開,皮下組織、筋膜、筋肉の観察と培養が必要です。画像診断のために、外科へのコンサルトが遅れてはダメです。本例では皮膚と血液培養でA群溶血性レンサ球菌が検出されました。

皮膚科の先生曰く、水疱を伴っているものはやばいのだそうです。

劇症型溶血性レンサ球菌感染症
 疫学
  1. 劇症型溶血性レンサ球菌感染症は1987年に米国で最初に報告され、その後、ヨーロッパやアジアからも報告されている。日本における最初の典型的な症例は1992年に報告されており、現在までに200人を超える患者が確認されている。そして、このうち約30%が死亡しており、きわめて致死率の高い感染症である。劇症型溶血性レンサ球菌感染症は子供から大人まで広範囲の年齢層に発症するが、特に30歳以上の大人に多いのがひとつの特徴である(IDWR 2002年40, 41号参照)。
  2. 初発症状は咽頭痛、発熱、消化管症状(食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢)、全身倦怠感、低血圧などの敗血症症状、筋痛などであるが、明らかな前駆症状がない場合もある。後発症状としては軟部組織病変、循環不全、呼吸不全、血液凝固異常(DIC)、肝腎症状など多臓器不全を来し、日常生活を営む状態から24時間以内に多臓器不全が完結する程度の進行を示す。A群レンサ球菌等による軟部組織炎、壊死性筋膜炎、上気道炎・肺炎、産褥熱は現在でも致命的となりうる疾患である。
  3. 溶血性レンサ球菌感染症 2006年4月~2011年

(A群
溶血性レンサ球菌による軟部組織感染症)
 臨床像
  病原性が強く,わずかな皮膚障害から感染、侵入門戸が不明な場合が多い
  急激に臨床像が悪化する
  見た目から想像できない程強い圧痛、SIRS、CKの上昇、多臓器不全を来す
  ガス産生はなし

 治療

  ICUで支持療法
  大量輸液
  局所のデブリードマン
  ペニシリン400万単位を4時間毎とクリンダマイシン600mgを8時間毎  
  免疫グロブリンの投与

A群溶血性レンサ球菌の毒素性ショック症候群の定義)
1 A群溶血性レンサ球菌が分離され,他のショックの原因が考えられない
2 臨床状態
  1. 収縮期血圧90mmHg以下かつ
  2. 以下の2つ以上が当てはまる
    1. 腎不全(血清Crが2以上)、慢性腎不全では、もともとのCrの2倍
    2. 凝固異常やDIC
    3. 肝障害(AST、ALT、T-Bilの上昇)
    4. ARDS
    5. 全身の紅斑様皮疹
    6. 軟部組織の壊死(壊死性筋膜炎、筋炎、あるいは壊疽を含む)

2014/06/03

皮膚の掻痒感と呼吸苦を訴える拡張型心筋症の中年男性

拡張型心筋症による心不全のため入院中の40歳代の男性。

これまで服薬アドヒアランスが悪く,心不全増悪を繰り返していた。今回も服薬の自己中断で心不全が増悪し入院となった。内服薬の再開で呼吸苦は改善したため試験外出したが、寿司を食べて帰院した後に皮膚の掻痒感と呼吸苦を訴えた。普段からエビを食べると口の中が痒くなる事があったが、今回もエビを食べたという。

<身体所見>

収縮期血圧100mmHg,脈拍80bpm整
全身に地図状の膨隆疹あり

<UCG>

もともとびまん性の左室壁運動あり、LVEF30%

<治療>

血管確保後、ステロイドの投与を開始した。

<経過>
ステロイド開始30分後、全身倦怠感、意識レベルの低下、血圧が触診で50mmHg程度まで低下し、応援を求められた。

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<診断>

食餌性アレルギー:
成人の食物アレルギーはエビ、カニ、ピーナッツ、栗、くるみ、ゴマがほとんど。これらの食物に対するアレルギーの体質は改善しない。

本例は拡張型心筋症の心不全であり、大量輸液とアドレナリン投与を躊躇していました。



<アナフィラキシー・ショックに対する治療のポイント>

 気道の血管性浮腫による窒息とショックがの回避
  1. 気道確保
  2. 血管確保+輸液、アドレナリンの皮下投与!(0.01ml/kg)
  3. 原因物質の除去
  •  ショックになったら必ずアドレナリンを使用、使わないと致命的な事もあり。
  •  アドレナリンは大腿前外側(外側広筋)に筋注。皮下投与だと吸収されにくい。
  •  アドレナリンはβ受容体刺激を介してmast cellや好塩基球のcyclicAMPレベルを高め、ケミカルメディエーターの放出を抑制、α作用は末梢血管の収縮、β作用は気管支攣縮と心機能低下を改善。

    各論

    アナフィラキシーの発症は抗原曝露直後から30分以内、持続時間は数分〜2・3時間程度。
     即時型反応(多くはこちら):早期に出現し、次第に改善
     遅発型反応:早期に完全消退するが数時間後に再発する二相性の経過

    非特異的な前駆症状の認識が大切
     口内違和感、しびれ感、尿意、便意、掻痒感、
     悪心、嘔吐、胸部違和感、視野異常、多弁、興奮など

    原因
     薬物(抗生剤、造影剤、NSAIDs、アスピリン、ワクチンなど全ての薬剤)
     食物
     虫刺され
     その他
      食物依存性運動誘発性
      ラテックス
      ハムスター咬傷
      物理的要因(運動,寒冷、熱、日光)

    血管造影でアナフィラキシーが発生した際に注意したい点
     造影剤に加え前投薬した薬剤(内服、静脈投与)を全てチェックする
     造影剤アレルギーだと早合点しない
     心機能が低下している症例でも早期にアドレナリンを投与
     血圧が維持できなければ、大量輸液、ドパミンやドブタミンの使用を早めに考慮

    2014/06/02

    Macでwmvの拡張子がついた動画をQuick Time用に保存する。

    Windows Media Player(wmv)で保存された動画を、Macで再生したり保存する必要性がでてきました。MacのQuick Timeで再生するにはどうすれば良いかを調べた所、コーデックコンポーネントを使うと良いということでした。

    サポートするメディア形式を QuickTime に追加する

    動画をKeynoteで再生しないといけないため、Flip4Mac Player Proを約3000円で購入することになりました。自分の使用頻度を考えると、結構高値ですね。