2014/06/03

皮膚の掻痒感と呼吸苦を訴える拡張型心筋症の中年男性

拡張型心筋症による心不全のため入院中の40歳代の男性。

これまで服薬アドヒアランスが悪く,心不全増悪を繰り返していた。今回も服薬の自己中断で心不全が増悪し入院となった。内服薬の再開で呼吸苦は改善したため試験外出したが、寿司を食べて帰院した後に皮膚の掻痒感と呼吸苦を訴えた。普段からエビを食べると口の中が痒くなる事があったが、今回もエビを食べたという。

<身体所見>

収縮期血圧100mmHg,脈拍80bpm整
全身に地図状の膨隆疹あり

<UCG>

もともとびまん性の左室壁運動あり、LVEF30%

<治療>

血管確保後、ステロイドの投与を開始した。

<経過>
ステロイド開始30分後、全身倦怠感、意識レベルの低下、血圧が触診で50mmHg程度まで低下し、応援を求められた。

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<診断>

食餌性アレルギー:
成人の食物アレルギーはエビ、カニ、ピーナッツ、栗、くるみ、ゴマがほとんど。これらの食物に対するアレルギーの体質は改善しない。

本例は拡張型心筋症の心不全であり、大量輸液とアドレナリン投与を躊躇していました。



<アナフィラキシー・ショックに対する治療のポイント>

 気道の血管性浮腫による窒息とショックがの回避
  1. 気道確保
  2. 血管確保+輸液、アドレナリンの皮下投与!(0.01ml/kg)
  3. 原因物質の除去
  •  ショックになったら必ずアドレナリンを使用、使わないと致命的な事もあり。
  •  アドレナリンは大腿前外側(外側広筋)に筋注。皮下投与だと吸収されにくい。
  •  アドレナリンはβ受容体刺激を介してmast cellや好塩基球のcyclicAMPレベルを高め、ケミカルメディエーターの放出を抑制、α作用は末梢血管の収縮、β作用は気管支攣縮と心機能低下を改善。

    各論

    アナフィラキシーの発症は抗原曝露直後から30分以内、持続時間は数分〜2・3時間程度。
     即時型反応(多くはこちら):早期に出現し、次第に改善
     遅発型反応:早期に完全消退するが数時間後に再発する二相性の経過

    非特異的な前駆症状の認識が大切
     口内違和感、しびれ感、尿意、便意、掻痒感、
     悪心、嘔吐、胸部違和感、視野異常、多弁、興奮など

    原因
     薬物(抗生剤、造影剤、NSAIDs、アスピリン、ワクチンなど全ての薬剤)
     食物
     虫刺され
     その他
      食物依存性運動誘発性
      ラテックス
      ハムスター咬傷
      物理的要因(運動,寒冷、熱、日光)

    血管造影でアナフィラキシーが発生した際に注意したい点
     造影剤に加え前投薬した薬剤(内服、静脈投与)を全てチェックする
     造影剤アレルギーだと早合点しない
     心機能が低下している症例でも早期にアドレナリンを投与
     血圧が維持できなければ、大量輸液、ドパミンやドブタミンの使用を早めに考慮

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