2014/12/21

看護学校の授業

看護学校での授業を受け持つ予定なので資料を購入してみました。


 良い点:
  1500円と比較的安価
  ネコナースというキャラクターがかわいい
  話が分かりやすい
  看護師国家試験の問題が載っているのが参考になる

 悪い点:
  単純化されすぎている
  全ての疾患をカバーしていない

 循環器の入門書としては簡単、単純明快で良い。
 苦手意識のある人は、これから初めても良さそうです。

 1989年06月11日にNHKで放送されたDVDです。
 心臓をどのように紹介しているのか、校正に興味があり購入しました。
 再生すると、自分が小さい時に見たことがあったことに気づきました。
 タモリがめちゃくちゃ若かった(笑)

2014/11/02

心筋梗塞の機械的合併症

心筋梗塞急性期には心筋壊死により組織が脆弱化し、以下の機械的合併症を発症することがあります。先日、前壁中隔心筋梗塞に心室中隔穿孔を来した症例を経験したので、最近の文献をチェックしてみました。発症頻度は低いですが十分注意が必要ですね。

機械的合併症は以下の通り

  1. 心室中隔穿孔
  2. 自由壁破裂
  3. 僧帽弁乳頭筋断裂
 心室中隔穿孔の発症頻度は1.5%、自由壁破裂は1.7%(国内報告)
 心室中隔穿孔の発症頻度は0.17%、自由壁破裂は0.52%(海外報告)

 リスクファクター
  高齢、女性、狭心症や心筋梗塞の既往がない方、高血圧の既往がない方など

 発症までの平均日数は2.6日(国内報告)
  24時間以内に機械的合併症を発症する症例は約50%、
  24時間以内に機械的合併症を発症した症例の死亡率は約90%(それ以降だと63%)

 発症までの平均時間は23.5時間(海外報告)
  90日生存率は、心室中隔穿孔で20%、自由壁破裂は37%

 心室中隔穿孔の対する外科的手術を受けた方の予後(海外報告)
  30日後の死亡率は36%
  30日まで生存された症例の生存率は1年で91%、5年で75%、10年で31%

   2014 Jan;63(1):14-8. doi: 10.1016/j.jjcc.2013.06.012. Epub 2013 Jul 29.
   2010 Jan 1;105(1):59-63. doi: 10.1016/j.amjcard.2009.08.653
   2014 Jul 3. pii: ezu248. [Epub ahead of print]

2014/09/13

Macでブルーレイを再生する方法

先日、Blu-rayのソフトを購入しましたが、Macの標準機器のみではBlu-rayの再生ができないことが判明しました!!(買う前に調べておけば良かったのですが・・・)

Blu-rayを再生するために以下の準備が必要です。
1 ブルーレイプレーヤーを準備
2 ブルーレイ再生ソフトを準備
   a Mac Blu-ray Player(有料)
   b VLC Media Player(無料、準備が必要)

今後動画の編集をしたり、バックアップのためデータをBlu-rayに書き込む必要になった場合を考えて、こちらを購入する予定にしました。

2014/07/30

トシリズマブ使用中の細菌感染の特徴

発熱を訴える50歳代の女性

関節リウマチのため、メトトレキセートの内服、トシリズマブの点滴を受けている患者。
1週間前から発熱を認め,近医で尿路感染症と診断された。抗生剤の内服を処方され経過観察していたが、突然の悪寒,発熱,全身倦怠感を自覚するようになり救急を受診。

<身体所見>
血圧110/60mmHg、脈拍120/分整、体温38.5度
呼吸音:正常
心音:正常

<検査所見>
WBC10000 CRP 0.03 PCT 陽性

<経過>
PCT陽性であり、重症敗血症を疑い抗生剤の投与を行いました。入院後の血液検査でもCRPは陰性のままでしたが、血液培養が陽性となり、経過からは尿路感染に伴う敗血症と診断しました。

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トシリズマブ(アクテムラ)は、IL-6阻害によりT細胞の活性化や抗体産生などを抑制する薬剤で、関節リウマチに対する高い有効性が知られています。

IL-6はB細胞に抗体産生を命令する分子というだけでなく、炎症時の急性期反応などをはじめとした生体のさまざまな反応に関与する重要な分子であり、その異常産生が、多発性骨髄腫、キャッスルマン病、関節リウマチ(図3)などの疾患に深く関わっているとの事です。

細菌感染ではIL-6の増加により、発熱やCRP上昇がみられますが、トシリズマブはIL-6を阻害することにより、感染徴候に乏しい症例が散見されるようです。当院の症例はCRPが陰性でしたが、WBCの上昇、発熱に乏しい症例の報告もあります。


トシリズマブそのものが感染症の発現や重症化にも関与することが知られ、特にリウマチの罹患歴の長い方、DMARDsの使用歴のある方では、特に重症感染症のリスクが高く注意が必要です。

トシリズマブ ケーススタディ −副作用への対処−
アクテムラ使用中、細菌感染のマーカーとしてCRPは当てにならない
Risk of infections in rheumatoid arthritis patients treated with tocilizumab.

2014/06/20

口腔アレルギー症候群(Oral allergy syndrome:OAS)

口腔アレルギー症候群
昨日の勉強会で初めて知った疾患です

(概念)

口腔粘膜に限局するアレルギー症状のことで、口唇、舌、口蓋、咽頭の急激な瘙痒、刺痛感、血管性浮腫、場合によっては耳の瘙痒感や咽喉圧迫感などを生じ、通常これらの症状は次第に治まってく症候群。

(病態)

症状を誘発しやすいフルーツには、リンゴ・キウイ・モモ・メロン・サクランボ・マンゴー・グレープフルーツなどがあります。野菜では、セロリ、ニンジン、トマト、ジャガイモ、ナッツ類では、アーモンド、ピーナッツ、クルミ、ココナッツ、ヘーゼルナッツなどが同様の症状を引き起こしやすいとされています。天然ゴムに含まれるラテックスも同様のアレルゲンとしての共通性があります。 食物と交差反応を起こす花粉抗原の代表としてシラカバ花粉の主要抗原であるBet v1やBet v2(プロフィリン)が知られています。Bet v1はPR protein(pathogenesis-related protein:感染特異的タンパク質)の一つ(PR‐10)に属し、植物がストレスに曝されると植物内に増加します。また多くの植物がこのタンパク質を有することも報告されており、交差反応性はこのグループ内での高いアミノ酸配列類似性によると考えられています。また、これらアレルゲンのIgEエピトープは加熱処理や酵素処理などによって容易に喪失してしまうことから立体構造に依存していると考えられています。ただし例外として、Bet v1グループに属すセロリ Api g1は加熱処理後でもアレルゲン性を有することが知られています。また最近Bet v1グループに属する一部のアレルゲン(Api g1や大豆 Gly m44))でPFSであるにもかかわらず、OASだけではなく全身症状を高率に伴うことが報告されており注目されています。

(治療)

食物を摂食した直後から始まる口腔内に限局したアレルギー症状の病歴と該当食品に対するIgEの証明によってなされます。該当食品が果物・野菜によるPFSの場合は、これに加えて花粉症の病歴があるか花粉に対する特異的IgEが陽性である(花粉に感作されていても花粉症を発症していないケースもあるため)ことです。該当する食物に対するIgEの測定は、市販の検査では抗原性が失活していることがあり、プリックテストのほうが有用であるとされています。

(診断)

対象食品の除去が基本ですが、加熱処理により経口摂取が可能になります。

2014/06/18

右室梗塞

(疫学)
急性下壁梗塞に合併する頻度は30〜40%

(病態)
急激な右室収縮不全により、右室拍出量が低下、代償的に静脈還流が増加し、右室拡張末期圧の上昇と右室拡大を来す。心膜が右室の拡張を制限するため、右室流入障害を来たし、さらに右室拍出量が低下する。Swan-Ganzカテーテルでは、①dip and plateau、②心拍出量の低下と右房圧の上昇(10mmHg以上)かつPCWPより高くなる。

(治療)
血圧を90mmHg以上、PCWPを15〜18mmHg、右房圧を15mmHgが目標。
 1 大量輸液(100〜200cc/h)
 2 1L以上の輸液後、病態の改善が無ければ,Swan-Ganzカテーテルを挿入
 3 左心不全を合併していれば,強心薬+IABPを考慮
 4  心室ペーシングは無効(心房心室の同期ペーシングは有効)。

2014/06/17

鯖で蕁麻疹

青魚などを食べた後に蕁麻疹が出た患者さんを時々診察する機会がありますが、もともと鯖にアレルギーがない方であれば、ヒスタミン食中毒(scombroid poisoning)を考えます。

Scombroidはサバ科のことで、サバ、マグロ、カツオ、サンマなどのことを言いますが、Scombroid以外の魚(イワシ、マイワシ、シイラ(mahimahi)、カタクチイワシ、ニシン、カジキ、オオキスズキ、シャケ、ハマチ)や鶏肉、ハム、チェダーチーズ、ドライミルクでもヒスタミン中毒は起こりうる(Step Beyond Resident 3、林寛之著、P.165、羊土社)」そうです。


食中毒を引き起こすと考えられる食品中のヒスタミン濃度は次のように推定されています。
  1. 5mg/100g以下:安全域である。
  2. 5~10 mg/100g;感受性が高いグループでは食中毒を起こす可能性がある。
  3. 10~100 mg/100g:食中毒を起こす可能性があり、軽度~中程度の症状を呈す。
  4. 100 mg/100g以上:食中毒を起こす可能性が高く、重篤な症状を呈する。
家族で同じ魚を食べても、魚肉に含まれるヒスタミンの量に違いがあり、症状がでる人と出ない人がいるのはこのためですね。

食品衛生の窓東京顕微鏡院にも詳しい解説がありますので、ご参照ください。

2014/06/16

アナフィラキシーのときのアドレナリンの筋注・皮下注、グルカゴンの使い方

アドレナリンの最高血中濃度までの到達時間は以下のとおり
 筋注 :8±2分
 皮下注:34±14分

アナフィラキシーの死亡例の多くは30分〜1時間以内に死亡していると報告されており、筋注でないとダメなのは頷ける。

β遮断薬を内服していたり、アドレナリンが効きにくい場合はグルカゴン1〜2mgを投与しても良い。

2014/06/06

上腕の腫脹と発赤、全身倦怠感を訴える60歳代の男性

高血圧症、脂質異常症の診断で近医通院中の60歳代の男性
受診前日から突然右腕の腫脹を自覚し徐々に増悪した。発熱、全身倦怠感もあるため内科を受診した。

<アレルギー歴>なし
<内服薬>降圧薬(Ca拮抗薬)、スタチンなど

<身体所見>
血圧80/50mmHg(普段は130mmHg程度),脈拍100bpm、体温37.5度、呼吸数は25回
右手背から上腕にかけて、発赤、高度の腫脹があり、自発痛が強い

<検査所見>

WBC 6000、CRP 22、Plts 25万、凝固異常なし、PCT>10、
BUN 40、Cr 3、AST 20、ALT 20、CPK 150、T-Bil 2.5
(1年前の血液検査ではは肝・腎機能異常なし)

<問題点>

1 皮膚の発疹
2 血圧低下(ショック状態)
3 炎症反応の上昇
4 腎機能障害
5 総ビリルビンの上昇

この疾患は何でしょう
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<診断>

劇症型溶血性レンサ球菌感染症による壊死性筋膜炎と毒素性ショック症候群

急速進行性であり早急に外科コンサルト!(時間の遅れは致命的)

<臨床像>

壊死性筋膜炎の三徴は、①局所の変化に対して痛みが異常に強い、②進行が早い、③皮膚が非常に湿潤している、だそうです。本例も急速(24時間以内)に症状が進行していることから、壊死性筋膜炎と診断しました。早期に壊死性筋膜炎と単純な蜂巣炎を臨床的に区別することは難しく、この疾患を疑えば、すぐに外科をコンサルトして、病変部分の切開,皮下組織、筋膜、筋肉の観察と培養が必要です。画像診断のために、外科へのコンサルトが遅れてはダメです。本例では皮膚と血液培養でA群溶血性レンサ球菌が検出されました。

皮膚科の先生曰く、水疱を伴っているものはやばいのだそうです。

劇症型溶血性レンサ球菌感染症
 疫学
  1. 劇症型溶血性レンサ球菌感染症は1987年に米国で最初に報告され、その後、ヨーロッパやアジアからも報告されている。日本における最初の典型的な症例は1992年に報告されており、現在までに200人を超える患者が確認されている。そして、このうち約30%が死亡しており、きわめて致死率の高い感染症である。劇症型溶血性レンサ球菌感染症は子供から大人まで広範囲の年齢層に発症するが、特に30歳以上の大人に多いのがひとつの特徴である(IDWR 2002年40, 41号参照)。
  2. 初発症状は咽頭痛、発熱、消化管症状(食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢)、全身倦怠感、低血圧などの敗血症症状、筋痛などであるが、明らかな前駆症状がない場合もある。後発症状としては軟部組織病変、循環不全、呼吸不全、血液凝固異常(DIC)、肝腎症状など多臓器不全を来し、日常生活を営む状態から24時間以内に多臓器不全が完結する程度の進行を示す。A群レンサ球菌等による軟部組織炎、壊死性筋膜炎、上気道炎・肺炎、産褥熱は現在でも致命的となりうる疾患である。
  3. 溶血性レンサ球菌感染症 2006年4月~2011年

(A群
溶血性レンサ球菌による軟部組織感染症)
 臨床像
  病原性が強く,わずかな皮膚障害から感染、侵入門戸が不明な場合が多い
  急激に臨床像が悪化する
  見た目から想像できない程強い圧痛、SIRS、CKの上昇、多臓器不全を来す
  ガス産生はなし

 治療

  ICUで支持療法
  大量輸液
  局所のデブリードマン
  ペニシリン400万単位を4時間毎とクリンダマイシン600mgを8時間毎  
  免疫グロブリンの投与

A群溶血性レンサ球菌の毒素性ショック症候群の定義)
1 A群溶血性レンサ球菌が分離され,他のショックの原因が考えられない
2 臨床状態
  1. 収縮期血圧90mmHg以下かつ
  2. 以下の2つ以上が当てはまる
    1. 腎不全(血清Crが2以上)、慢性腎不全では、もともとのCrの2倍
    2. 凝固異常やDIC
    3. 肝障害(AST、ALT、T-Bilの上昇)
    4. ARDS
    5. 全身の紅斑様皮疹
    6. 軟部組織の壊死(壊死性筋膜炎、筋炎、あるいは壊疽を含む)

2014/06/03

皮膚の掻痒感と呼吸苦を訴える拡張型心筋症の中年男性

拡張型心筋症による心不全のため入院中の40歳代の男性。

これまで服薬アドヒアランスが悪く,心不全増悪を繰り返していた。今回も服薬の自己中断で心不全が増悪し入院となった。内服薬の再開で呼吸苦は改善したため試験外出したが、寿司を食べて帰院した後に皮膚の掻痒感と呼吸苦を訴えた。普段からエビを食べると口の中が痒くなる事があったが、今回もエビを食べたという。

<身体所見>

収縮期血圧100mmHg,脈拍80bpm整
全身に地図状の膨隆疹あり

<UCG>

もともとびまん性の左室壁運動あり、LVEF30%

<治療>

血管確保後、ステロイドの投与を開始した。

<経過>
ステロイド開始30分後、全身倦怠感、意識レベルの低下、血圧が触診で50mmHg程度まで低下し、応援を求められた。

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<診断>

食餌性アレルギー:
成人の食物アレルギーはエビ、カニ、ピーナッツ、栗、くるみ、ゴマがほとんど。これらの食物に対するアレルギーの体質は改善しない。

本例は拡張型心筋症の心不全であり、大量輸液とアドレナリン投与を躊躇していました。



<アナフィラキシー・ショックに対する治療のポイント>

 気道の血管性浮腫による窒息とショックがの回避
  1. 気道確保
  2. 血管確保+輸液、アドレナリンの皮下投与!(0.01ml/kg)
  3. 原因物質の除去
  •  ショックになったら必ずアドレナリンを使用、使わないと致命的な事もあり。
  •  アドレナリンは大腿前外側(外側広筋)に筋注。皮下投与だと吸収されにくい。
  •  アドレナリンはβ受容体刺激を介してmast cellや好塩基球のcyclicAMPレベルを高め、ケミカルメディエーターの放出を抑制、α作用は末梢血管の収縮、β作用は気管支攣縮と心機能低下を改善。

    各論

    アナフィラキシーの発症は抗原曝露直後から30分以内、持続時間は数分〜2・3時間程度。
     即時型反応(多くはこちら):早期に出現し、次第に改善
     遅発型反応:早期に完全消退するが数時間後に再発する二相性の経過

    非特異的な前駆症状の認識が大切
     口内違和感、しびれ感、尿意、便意、掻痒感、
     悪心、嘔吐、胸部違和感、視野異常、多弁、興奮など

    原因
     薬物(抗生剤、造影剤、NSAIDs、アスピリン、ワクチンなど全ての薬剤)
     食物
     虫刺され
     その他
      食物依存性運動誘発性
      ラテックス
      ハムスター咬傷
      物理的要因(運動,寒冷、熱、日光)

    血管造影でアナフィラキシーが発生した際に注意したい点
     造影剤に加え前投薬した薬剤(内服、静脈投与)を全てチェックする
     造影剤アレルギーだと早合点しない
     心機能が低下している症例でも早期にアドレナリンを投与
     血圧が維持できなければ、大量輸液、ドパミンやドブタミンの使用を早めに考慮

    2014/06/02

    Macでwmvの拡張子がついた動画をQuick Time用に保存する。

    Windows Media Player(wmv)で保存された動画を、Macで再生したり保存する必要性がでてきました。MacのQuick Timeで再生するにはどうすれば良いかを調べた所、コーデックコンポーネントを使うと良いということでした。

    サポートするメディア形式を QuickTime に追加する

    動画をKeynoteで再生しないといけないため、Flip4Mac Player Proを約3000円で購入することになりました。自分の使用頻度を考えると、結構高値ですね。

    2014/05/26

    KeynoteでPDFファイルを開く

    PDFファイルをKeynoteのプレゼンテーションで使う時、どうしていますか?

    PDF to Keynote

    これを使うとPDFをKeynoteファイルに変換することができます。またレイアウトのずれが激しいWindowsのPowerPointファイルを一旦PDFとして保存し、その後PDF to Keynoteを使ってファイルを開くと割と良さそうです。

    2014/05/23

    片側の間欠的な頭痛、血圧の上昇と持続性の耳鳴を訴える高齢女性

    不眠、消化器癌術後、水腎症のためWJカテーテルを留置された当院通院中の70歳代の女性。

    突然の動悸発作のため当院救急外来を受診し、発作性心房細動を指摘されたため循環器科受診となった。発作の頻度は低く、しばらく経過観察となった。

    循環器科を受診した約1ヶ月後の朝方に、突然、動悸、耳鳴りと片側の後頸部〜側頭部の痛みを自覚し外来を受診。すぐに動悸は改善したが、頭痛と耳鳴が持続したため耳鼻科を受診したが、特に異常なしとの返事であった。その後数時間の安静で耳鳴は改善した。再度病歴を聴取すると、以前から頭痛を自覚することがあったとの事であり、一次性頭痛と診断しNSAIDの投与を行った。

    しかし、その後も拍動性頭痛と耳鳴を自覚、特に血圧の上昇時に悪化し、度々救急外来を受診するようになった。救急で行った頭部CTでは器質的異常はなく、血圧が低下すると症状が改善するため経過観察となった。循環器受診2ヶ月後には、頭痛、耳鳴、片側の眼痛を自覚したため眼科で精査を受けたが緑内障は否定的であった。受診頻度が多く原因検索目的に入院となった。

    <身体所見>
    血圧120/70mmHg,脈拍70bpm整
    顔面浮腫なし、甲状腺腫なし
    胸部、腹部には診察上問題なし
    下肢に浮腫なし

    <検査所見>
    RBC 380 Hb 9.5 Ht 29 MCV 77 Plt 34.8 BNP 189.5 
    甲状腺ホルモン:正常、カテコールアミン、PRA、Ald正常

    <鑑別診断>
    二次性頭痛の鑑別のためMRI検査を行った


    この疾患は何でしょう
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    <診断>
    硬膜動静脈瘻

    頭部MRIで上記と診断した。頭部を再度診察すると側頭部に収縮期雑音を認めた。経過から血圧が上昇しシャント血流が増えると耳鳴が悪化するという病態を疑った。

    この症例の反省点は,①耳鳴をキーワードに鑑別診断を行わなかった、②頭部CTで異常がなく、二次性頭痛の鑑別が不十分であった、③頭部の診察が不十分で、他覚的耳鳴の診断ができていなかったという点です。

    <ポイント>
    1. 耳鳴は年齢とともに増加し、40歳代、50歳代で20%以上の患者が訴える。
    2. 発生源により末梢性・中枢性、症状により自覚的・他覚的に分類される
    3. 心血管障害・神経系障害・薬剤性などの関連症状の事があるため病歴が大切
    4. 随伴症状に注意(難聴、めまい、耳痛、頭痛など)
    5. 中枢性耳鳴を疑ったら頭部CTだけでなく、MRI検査も行う
    6. 後天的疾患であるが成因は不明、中年女性に多い
    7. 本邦における硬膜動静脈瘻の発生頻度は0.29人/10万人/年で、海綿静脈洞部病変の占める割合が46%と多い

    2014/05/21

    上肢の浮腫と全身倦怠感を訴える高齢女性

    高血圧症、糖尿病、不眠などの診断で近医通院中の80歳代の女性

    当院受診の2ヶ月前より右手背の浮腫、1ヶ月前より全身倦怠感を自覚。浮腫の悪化があり、近医を受診しセフカペンの内服を処方された。その約2週間後に両肘〜前腕部の対称性の腫脹と熱感、脱力、皮疹、顔面浮腫を自覚するようになった。さらに軽度の労作時の呼吸困難のため近医を再度受診し,心不全の疑いで循環器科に紹介。

    <家族歴>姉が関節リウマチ

    <身体所見>
    血圧,脈拍に問題なし、体温37.3度
    顔面浮腫なし、甲状腺腫なし
    胸部、腹部には診察上問題なし、皮疹あり
    下肢に浮腫なし、両肘〜前腕部の対称性の浮腫と熱感あり、

    <検査所見>
    WBC正常、CRP陰性、PCT陰性、ESR25mm/h
    抗核抗体陰性、RFは18と軽度上昇、AST 80、ALT 50、LDH 300、ALP 750、CPK 600
    甲状腺機能:正常

    <心エコー>正常、<胸部レントゲン>軽度の心拡大

    <鑑別診断>
    感染性疾患、薬剤性、自己免疫疾患などを鑑別疾患に考えていた。CPKが軽度上昇しているのは?だが、高齢発症,自己抗体が陰性、急性発症の左右対称性の浮腫があることから、RS3PE症候群を疑った。数回の経過観察後、経口ステロイドの投与を開始した。その後,浮腫は徐々に改善したものの、胸部、顔面の掻痒感、全身倦怠感(脱力感)のため動けなくなったため、初診から約1ヶ月後、精査目的に入院となった。

    (顕性化してきた皮疹、今回の症例のものではありません)


    この疾患は何でしょう
    ------------------------------------------------------------------------------------------------

    <診断>
    皮膚筋炎

    担当の研修医が皮疹を見るなり”皮膚筋炎”なのではという意見で、皮膚科をコンサルトしたところ頸部は皮膚筋炎に特徴的なVネックサインということが判明しました。神経内科で近位筋の筋力低下、針筋電図でも筋原性変化、MRIで筋肉の炎症性変化を認め、CPKの上昇と合わせて皮膚筋炎と確定診断しました。初めに膠原病専門医が皮疹と血液検査データをみていたら、もっと早い段階で診断できた可能性があります。今回は優秀な研修医に助けられました。

    まだ診断がついていない時点で、放射線科の先生が胸部CTで通常とやや違う間質性肺炎を認めるとコメントされていました。さすができる放射線科医は違う!

    この症例の反省点は,①高齢で抗核抗体が陰性であり、RS3PE症候群以外の膠原病はないだろという考え,②CPKの軽度の上昇や皮疹というキーワードが抜けていた、③皮膚筋炎の皮疹を診たことがなかった、④急速に進行するという事を知らなかった、という所です。以下に大事な疫学を記載します。

    <疫学>
    1. 日本の年間発病率は5~10人/100万人、有病率は2~5人/10万人程度で、成人では1:2の割合で女性に多い。あらゆる年齢層に発症するが、小児期(5~14歳)と成人期(35~64歳)にピークを持つ2峰性分布を示す。
    2. 多発性筋炎の進行速度は患者によって非常に不均一で、年余にわたって診断されずに生活される症例、週単位で体重減少(筋量低下)、歩行不能、嚥下障害(誤嚥・窒息の危険)、換気障害に至る例もある。しかし、基本的に急性発症はしない。
    3. 間質性肺炎が30~60%に出現する。
    4. 特徴的な皮膚所見(へリオトロープ疹、ゴットロン徴候、V字ネック型紅斑、項部から両肩に広がる紅斑など)

    2014/05/20

    ティアニー先生の診断入門

    ティアニー先生の診断入門

    総合診療について興味を持つきっかけになった本です(初版本の方ですが)。

    指導的な立場になった時、自分は鑑別診断を考える方法について体系的に勉強したことがない事に気付きました。これでは、外来や当直で指導することがままならない、また自分もこのままではいけないという気持ちになった時に購入しました。

    大リーガー医としてとても高名なティアニー先生が、患者の問題点を全て挙げ、11のカテゴリーから鑑別診断を考えていくというプロセスが非常に分かり易く記載されています。実際に自分で診断していくようなストーリーになっていて、読み物として非常に面白いです。

    初期研修医にこの本を紹介したところ、内容が難しかったという意見があったので、ある程度の臨床経験がないと面白いと感じないのかもしれません。そういった研修医には検査や身体所見の意味を調べながら読み込んでいくと良いとアドバイスしてみました。

    内科医としての醍醐味は色々ですが、診断のプロセスはその1つであるように思います。まるで自分が名探偵にでもなったような気持ちになり、問題が解決したときのすっきりと晴れやかな気持ちは何とも言えません。そのワクワクを共感できる1冊だと思います。薄くて安い本なので、全ての内科医にお勧めします。